体験のヒント
ピアノを弾いたことのない人にいきなり「ショパンを弾きなさい」といっても、それは難しいと思います。しかし、バイエルから練習を始めれば、いつの日かショパンを弾けるようになるかもしれません。
催眠もそれと同じで、初めはうまく行かなくても、練習してだんだんとコツをつかむことによって、上手くいくようになります。
では、催眠を体験するためにはどのような練習をすればよいのでしょうか。
それはずばり、催眠に入ったフリをすること、です。
寝たフリをしていると本当に寝てしまうことがあるように、体験が上手く行っているフリをすると、本当にうまくいくようになるのです。
<5>風船 を例に説明します。
目の前のイメージのヒモをつまんだら、風船が上にあがるイメージをしながら、手が上に引っ張られているフリをしてください。手が軽くなったフリ。勝手に手が上に動いているフリ……。
実際に手を、できるだけゆっくり、上に動かしてみてください。目はイメージの風船を見つめたまま、心の中で、「本当に引っ張られている」と感じてください。
手が頭の上まで来たら、風船をつまんでいる指を離し、膝の上に戻します。そしてヒモをつまむところからもう一度はじめてください。これを5回くらい行ってください。
その後、改めて実験してみてください。
練習前にうまくいかなかったときよりも、体が反応していると思います。
もしかしたら、さっきよりも手があがってはいるけれど、なんだか自分で動かしているような気がするかもしれません。
初めは意識している部分があってもいいんです。
手があがっている原因の50%は自分であげているのかもしれない。しかし、残りの50%は無意識が暗示に反応してあげているのです。
どうかその感覚を楽しんでください。実際、手があがっている原因のどこまでが意識的なもので、どこからが暗示なのかなんて、誰にもわからないのです。もしかしたらそれは、自分で思っているよりもずっと暗示によるものなのかもしれません。
練習を重ねるごとに、意識の部分が減り、暗示の部分が増えていきます。
どうしても暗示にかかっている自信が持てなければ、左手はイメージしながらあげて、右手は100%意識して上にあげてください。違いが体感できると思います。
他の体験もフリをすることでだんだんとうまくできるようになります。
「体を動かさない体験はどうやってフリをするの?」と思った方もいらっしゃると思いますが、簡単です。
レモンの場合はすっぱいフリ。すっぱいときの顔をしてみる。すっぱいときの声を出してみる。
(一度本物のレモンで同じことをして、レモンの味を確認してから行うとより効果的)
指の輪の場合は指が離れないフリ。右手で離そうと引っ張っても硬くて離せないフリをしてみる。心の中で「どうしよう、離れない!」と焦ってみる。
パブロフの犬だって、一度や二度、食事前に鈴を鳴らされたから鈴に反応するようになったのではないと思います。何度も何度も繰り返すことがポイントなんですね。
人間の体って、ほとんど無意識が自動操縦によって動かしているのです。キーボードを叩く手だって、文字を読んで意味を理解するプロセスだって、初めは意識的にしていたものが、やがて無意識にスイッチができ、自動操縦できるようになって
いったのです。
催眠暗示も全く同じなんですよ。