確か村上春樹の小説だったと思うのですが、
「幸せになるなんて簡単よ。毎日幸せなふりをすればいいの。そうすると、周りの人は『あの子は幸せなんだなぁ』って思うようになって、だんだん本当に自分は幸せなんじゃないかって気になるの」
って女の子が言うくだりがあるんです。(正確な引用ではありませんが、だいたいこんな意味でした。)
僕はこれを読んだとき、なるほどそうかもしれない、と変に納得しました。……が、同時に、幸せなふりなんてしたくないよな、とも思いました。それができないから苦しいんだよ、って。
いま僕は、幸せになれるなら幸せなふりをしてもいいと本気で思います。でも残念なことに、「幸せなふり」って何なのかよく判らない。どうすれば、周りの人は僕のことを「幸せそうだな」って思うのだろう?
「みてみて! 私、幸せなのよ!」的なオーラを振りまいている人はたくさんいます。楽しい予定がびっしり詰まっていて、周りには絶えずとりまきみたいなのがいて、美人で(すみません、女の子を想像しています)、好奇心いっぱいで……。でも、これは偏見かもしれませんが、僕はそういう幸せを演出しているような人はどうしても嘘に見えてしまうんです(嫌な性格ですね)。もっと肩の力抜いて生きればいいのにって(大きなお世話ですよね)。
どういう人を見たら、僕は「あぁ、この人は幸せなんだなぁ」って思うのかな。
いま思いついたのですが、ちょうど今頃の季節、家族が寝静まった台所で、ぺヤングソース焼きそばの湯切りをして、シンクが「ボコッ」って鳴ったのを、赤い半纏を着ながら見つめている、夢多き中学3年生の女の子(元女子バレー部、副主将)を見たら、「この子は幸せなんだろうな」って思うかもしれない。
多分、一生そんなシーンに出くわすことはないと思うけれど……。
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