のび太の知られざる素顔

ドラえもんの1巻を読んだことはありますか?

そもそも何故、ドラえもんは野比家にやって来ることになったのか、そこからドラえもんの物語は始まります。

未来の のび太 の子孫は、のび太 の残した借金のせいで大変苦しい生活を送っていました。(お年玉がたったの50円!、という子供にとっては切実な状況です)

セワシ君(のび太 のひ孫)は、のび太 が立派な人間になって、未来の自分たちの生活が少しでも変わるよう、ドラえもんを のび太 のもとに送る決心をし、それでドラえもんは野比家にやって来たのです。

さて、ここで気になるのは、のび太 の作った借金です。

ドラえもん1巻によると、のび太 は就職が出来なかったので、自分で会社を始めて社長になります。そして社長室で花火をしていたのが原因で会社が火事になり、会社は倒産してしまいます。それから野比家の借金生活は始まるのです。

ちょっと話は横道にそれますが、この時の のび太 の奥さんはジャイアンの妹の、ジャイ子です。

ジャイ子はドラえもんの中であまり登場する機会はありませんが、実は登場人物の中で一番成功した人物なのです。

彼女はマンガを描くのがとても好きです。ギャグ漫画のアイデアを得ようと のび太 の尾行調査をしたり、何度も雑誌に投稿したりと、夢を目指して一直線。当初は「こんなへたくそみたことない」(のび太 談)というようなレベルだったのですが、雑誌の編集長からじきじきに返事をもらえるまでになり、「クリスチーネ剛田」の名前でやがて売れっ子漫画家にまで成長するのです。

のび太 が社長としてある程度成功できたのは、陰で のび太 を支えてきたジャイ子の影響が少なからずあるのかもしれません。

話を元に戻しますが、僕は子供のころは、「ダメな のび太」ということで、就職できなくて社長になったり、社長室で花火をして会社が火事になってしまったり、というくだりを笑いながら読み飛ばしていたのですが、今になって思うと、のび太 はなかなかのやり手と言わざるを得ません。

社長と言っても、自称社長というわけではなく、結構大きな会社の社長になったようです。少なくとも社長室があり、花火をして遊んでいても会社が回っているのですから、従業員も多くいたことでしょう。マンガに出てくる会社の絵も、結構立派だったように思います。

僕は今までの人生で、アルバイトや派遣社員も含め、何回か会社をかわってきました。いろいろな会社の就職試験も受けました。働きたい、と強く思える会社もなく、独立を考えた時期もありました。働きたい会社に就職することはとても難しかったですが、独立するのはそれとは別の種類の難しさがありました。

しかし のび太 は、それをやってのけた。

しかもドラえもんの力を一切借りずに、やってのけたのです。

ドラえもん登場以後の、何でもドラえもんの道具に頼る のび太 は、もしかしたら本来の のび太 よりも、さらにダメな人間になってしまったのではないかと、ふと、新宿の地下道を歩きながら思いました。

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