秋の夕暮れオフコース
僕はオフコースが好きです。
人生で初めて好きになったアーティストです。
きっかけは、中学生の頃、姉が聴いていた「夏の終わり」という歌詞に心が震えたから。
♪夏は冬に憧れて、冬は夏に帰りたい♪
たったそれだけなのだけれど、特に音楽が好きなわけでもなく、ベストテンのアイドルの歌くらいしか聴いたことがなかった僕は、「こんな歌は聴いたことがない!」とひどく衝撃を受けました。
今思えば、ユーミン「守ってあげたい」の「遠い夏、息をころしトンボを捕った。もう一度あんな気持ちで夢を捕まえてね」という歌詞から受けた衝撃の方が遥かに大きかったし、尾崎豊の「100円玉で買える温もり」とか、佐野元春の「つまらない大人にはなりたくない」、更には洋楽を聴くようになって、ボブデュランの「How
does it feel?」とか、ビートルズの「Living is easy with eyes
closed」などは、「夏の終わり」よりもずっと影響を受けました。
それでも、「夏の終わり」に始まり、友達に借りた「オフコース・ベストナウ」、姉が持っていた「Three and Two」、「over」と聴き進めるうち、オフコースにどっぷりはまってしまいました。だからオフコースを久しぶりに聴くと、僕の心はすぐに、中学時代に戻ってしまいます。学園祭とか、その後のフォークダンスとか、部屋の窓から見上げた雲とか、中間試験の帰り道とか……。
「秋の気配」という曲は、特に好きではありませんが、オフコースの象徴的な曲だと思います。オフコースは、秋の夕暮れから夜に聴くべき曲ばかりで、必然的に、オフコースから思い出される思い出も、秋の思い出ばかりです。
なんでオフコースのことを突然書きたくなったのかというと、「あぁ、早く、9月になれば……」という歌詞がふっと浮かんだからです。「I Love
You」は、オフコースの曲にしては歌詞の内容が薄いですが、それ故に歌詞ではなく、旋律から受ける印象の強い曲です。間奏で流れるジョンレノンの死を伝えるニュースも、最後の合唱の部分も、理由は良く判らないけれど、鳥肌が立つくらい、心が共鳴します。
子供の頃からずっと、僕は過去の自分に戻りたいという気持ちをほとんど感じたことはありませんでした。
でも、オフコースを聴くと、一日だけ中学生に戻るのも悪くないのではないかと思うことがあります。
「もう一度今日のニュース。ジョンレノンが死にました。享年40歳でした」
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