マーチン・セントジェームスについて思う
ホムンクルスの催眠術特番を観ました。
ふたを開ければ、ただのマーチンセントジェームスのショーで、ちょっとがっかり。
催眠を科学的に検証してくれると思っていたんだけどなぁ。
やたらとテロップで、「テレビを見て催眠にかかることは絶対にありません」なんて出ていたけれど、これは大嘘です。入りの良い人なら、あれだけでも手が固まったりする可能性は十分にあります。むしろこのテロップが、「あなたは催眠に入らない」という暗示になっているんですね。
番組は「マーチン恐るべし!」というスタンスで製作されていましたが、これは誤解を生む表現だなぁと思いました。
確かに彼はうまいとは思いますが、彼がすごいのではなくて、出演者の被催眠性がすごいのです。
いくらマーチンでも、催眠に入らないと決めている人を入れることは不可能だし、入りの良い人がいれば、誰だって同じことをすることはできます。
彼はすべての出演者に暗示をかけたわけではなく、初めの手固めによって、かかりの良い人と悪い人を振り分け、良い人を段階的に集めていました。
あれだけの人数、しかもテレビに映りたい芸能人がいるのですから、被催眠性の高い人を探すのは簡単でしょう。
この番組をみて、あまりにもマーチンが残酷なので、ちょっと引いてしまいました。
やるせなすの石井ちゃんに、タマネギを「おいしいリンゴだ」と言って食べさせていました。そこまではいいのですが、マーチンはよりにもよって、タマネギをがぶっと齧った直後に暗示を解きました。当然石井ちゃんはむせていました。本人にしてみれば、リンゴを食べていたのにいきなりそれがタマネギに変わったのですから、苦しくて当然です。
また、男の人に対し、「妊娠して出産する」という暗示をしていました。みんな苦しい顔をして出産を始めましたが、これ、当然すごく痛かったはずです。出産に対して、苦しいイメージがあればあるほど、その苦しみは大きかったことでしょう。
ワサビがアイスクリームになる暗示をして、まだワサビが口の中にあるのに暗示をといていましたが、あれだって相当口の中が辛かったはず。
サソリに対する恐怖を取り除いたあと、素に戻したのも然り。
マーチンは、あれだけ催眠に接しながらも、催眠暗示にかかっている人の気持ちがちっとも解っていないのです。それがどれだけ辛く、嫌なことなのか。
10年前は、ただただ「不思議だなぁ」と思いながら彼のショーを観ていました。しかし催眠を勉強するようになり、多くの人を誘導するようになってからは、催眠中の経験は、脳が直接作り出すイメージだからこそ、現実よりも現実的な場合があることを知りました。
音楽が鳴ると指揮者になるとか、猪木の真似をしてしまうとか、それくらいならいいのかもしれませんが、出産やワサビは笑えなかったし、苛立ちさえ感じました。