完成された曲
3年くらい前ですが、コンビニの駐車場でラジオをつけていたら、ビリージョエルの Piano Man
が流れてきました。僕はこの曲を聴くのが初めてだったのですが、ピアノのイントロ、ハーモニカ、そして切ない歌声に、聴き入ってしまいました。初めて聴く曲でいきなり感情移入できることって滅多にないのですが、この曲は雷に打たれたみたいにしびれました。
一番切なかったのは、奥さんのいない小説家が話している相手(Davyという人)が、未だ海軍(Navy)にいて、「おそらく一生、海軍にいることだろう」っていう部分。
さらっと韻を踏むところは、本当に英語圏のアーティストはすごいと思います。韻とともに歌詞がすーっと入ってくるんですよね。日本のアーティストで韻にこだわっている人ってほとんどいないんじゃないかな。(ラップやっている人は韻踏んでる
??)
日本の小学生に、韻を踏むっていう概念なんてないと思うけれど、僕は以前、アメリカの小学生に、「Make と Cake
は韻だよね?」って質問されてびっくりしたことがあります。韻を踏む、ということが、詩を書く上での重要な要素であることがちゃんと教育されているんですね。
もともと和歌や短歌には押韻があるわけですから、日本語が英語に比べて韻を踏みにくいというわけではないと思うのだけれど……。
韻と言えば、ビートルズの曲も見事だと思います。「Girl」なんて、やりすぎじゃないかって言うくらい。聴いていてとても心地がよいです。
僕の中で「完成されている曲」っていうのがあるんです。好きな曲や感動した曲はたくさんありますが、その曲が完成したこと自体、奇跡に感じるような、衝撃的な曲ってそうそうあるものではありません。作った本人もプロデューサーも、曲ができあがったときに「やったな」って密かに思ったんじゃないかって感じる曲です。
Piano Man もそうです。ジョンレノンの Imagine
もそうです。(でもそれを言い出すとジョンレノンとビートルズは、僕の中で存在自体が完成されているので、ちょっと別格かも)
日本人の曲だと、今井美樹の「カ・ケ・ヒ・キ27」。この曲の入っているアルバムには、「幸せになりたい」も「雨にキッスの花束を」も入っていて、「カ・ケ・ヒ・キ27」は決してヒットすることを背負わされた曲ではありません。ですが、だからこそ適度に気が抜けていて、聴けば聴くほど引き込まれるのだと思います。僕はこの曲をよく聴いていたのは大学1年の頃。27歳なんてすごく大人に感じていました。
「だって友達でしょ? なに言ってんの?」なんて言っちゃう関係に憧れたものです。
川本真琴の「桜」をはじめて聴いたときの衝撃も相当なものでした。Piano Man
もそうでしたが、初めて聴いたときに歌詞がビシビシ入ってくる曲ってすごいと思うのです。
聴くだけで情景がパーっと浮かぶ曲、聴いていたときの想い出が蘇ってくる曲、気分が乗ってくる曲などありますが、「桜」の場合は聞いているだけで、春先の生温かい空気にすっぽり包まれる感じがします。歌声が瑞々しく、ピアノの伴奏も軽快。高校へ行っていたのなんてもう10年以上も前のことですが、この曲を聴くたび、あの不安定で希望に満ちた時代に僕の心は戻ってしまいます。