3つ数えると目が覚めます
「3つ数えると目が覚めます」
今日、僕が言いたいことはそういうことです。
3つ数えると何故目が覚めるのか? 果たしてこれは暗示なのか、それとも協力なのか?
催眠誘導の際、「目がだんだん閉じていきますよ」という暗示を与えても、意地を張るようにずっと目を開けている方がいらっしゃいます。「目は全然勝手に閉じてこないし、勝手に閉じてこないのなら催眠に入っていないのだから目を閉じるべきではない」、と考えているのだと思う。
そんな場合は、「じゃあゆっくり目を閉じて下さい」とお願いします。すると、目を閉じてくれます。これは暗示ではなく、協力ですね。
でも、一通り誘導した後、「3つ数えると目が覚めます」という言葉には、100%の人がその通りになります。僕は決して、「3つ数えたら目を開けて下さい」とお願いしているわけではありません。言葉だけを見ると、これは「目がだんだん閉じていきますよ」と同じ、暗示なのです。「あなたの意思とは関係なくそうなってしまいますよ」という意味です。もし目が覚めないならば、そのまま閉じていてもいいわけです。でもそんな風に抵抗される方は一人もいらっしゃいません。目を閉じることには抵抗があっても、目を開けることには抵抗はないようです。
暗示、というのは英語では [suggestion]
と言います。直訳すると、「提案」というようなニュアンスです。催眠状態では、意識が通常とは違う「変性意識状態」になっていますので、覚醒時には抵抗のある「目が閉じていく」というような提案も、無意識が受け入れて目を閉じてしまうのです。
暗示は何も、催眠状態でなければ反応しない、というものではありません。日常生活は暗示であふれていますし、言い方を変えれば、コミュニケーションというのは暗示のかけあいのことなのです。
催眠状態に入れなかった、とおっしゃる方も、3つ数えれば目を覚まします。
相手に受け入れて欲しい暗示を、心が受け入れやすいようにオブラートに包んでしまうことができれば、もう催眠誘導なんて面倒なプロセスは必要がなくなるのかもしれません。