4組のカップルでバーベキューへ行くことについて
4人の男性が仲の良いグループだったとします。
4人には全員、つきあっている恋人がいて、今度お互いのパートナーを連れてバーベキューに行こうということになりました。
8人でバーベキューをしてみると、女性同士もすぐに仲良くなりました。
他人から見れば、4組のカップルで構成されたこの8人は、仲の良いグループに見えます。何の問題もありません。
さて、この8人が、このような出会い方ではなく、まだ誰もつきあっていないうちに偶然に出会い、何となくグループになったとしましょう。
そして出会った瞬間に、8人とも一目惚れをし、潜在的な4組のカップルが出来上がったとします。
しかし、いくら一目惚れをしたからといって、翌日に4組のカップルが成立しているわけではありません。
8人で仲良く時間を過ごしながらも、「自分が相手に気持ちを伝えることで、この和を乱してしまうのではないか?」、「もし上手くいかなかったら、せっかく仲良くなった他の6人とも気まずくなってしまうのではないか?」などと悩み、誰もがなかなか告白することができません。
やがて時間が流れ、どうやら相手も自分を好きなのではないかと、全員が気づきはじめます。そして最初の1人が均衡状態を破り、めでたく1組目のカップルが成立します。残りの6人は、「先を越された」と思いつつ、大いに刺激され、自分はいつ気持ちを伝えようかと考えます。
やがて2組目のカップルが成立します。残された4人は、だんだんと焦ってきます。
しばらくして、3組目のカップルも成立します。
さて、残された2人は、初めからお互いのことが好きでした。しかし、他の6人よりもちょっとだけ勇気がなかったために、今ではグループの中で、残りもの同士のような、逆に気まずい立場に立たされています。「お前らもつきあっちゃえよ」と、冷やかされて顔を真っ赤にしたりもします。
お互い、余計に意識するようになり、ついには男の子が気持ちを伝えます。
「初めから君のことが好きだったんだ」
「私も初めから、あなたしか見えなかったわ」
2人はめでたく、つきあうことになります。
しかし、この「最後の2人」という状況が、関係に小さな影を落とします。
他の6人は、決して口には出しませんが、心のどこかで「あの2人は仕方なく、残りもの同士でつきあったのだ」と思っているかもしれませんし、思っていなかったとしても、本人たちはそう思われているような後ろめたさを感じるかもしれません。
また、本人たちもパートナーに対して、決して口には出しませんが、「この人は私しか残っていなかったので私で妥協したのだ」という思いがいつまでもついてまわるかもしれませんし、ケンカの際、つい「本当は私のことなんか好きじゃなかったんでしょ!」などと相手を責めてしまうかもしれません。そして相手が「そんなことはない」と否定しても、それを信じることができないかもしれません。
彼女には、彼が他の3人よりも後に告白をしたという事実が、彼の迷いを表しているように感じられるのです。
相手を好きになってから、その気持ちを伝えるまでのタイミングは人それぞれです。すぐに気持ちを伝える人もいれば、1年も2年も気持ちをあたためて、それから伝える人もいます。
彼には彼のタイミングがありますので、決してそのタイミングが「迷い」を表しているわけではありませんし、他の6人がいない状況で2人が出会っていれば、彼女はそのタイミングが早いのか遅いのか、考えることもなかったでしょう。
さて、ようやく4組のカップルが成立して、8人でバーベキューへ行きました。
他人から見れば、4組のカップルで構成されたこの8人は、仲の良いグループに見えます。何の問題もありません。
しかし、4人の男性グループがお互いのパートナーを連れて8人でバーベキューをしているのと、8人の男女のグループが、結果的に4組のカップルになってバーベキューをしているのでは、見た目は同じですが、やはり決定的に何かが違います。6人は最後の1組を少し下に見ているかもしれませんし、最後の1組はお互いの気持ちをどこか信じきることができません。
どうでもいいことを長々と書きましたが、見た目が同じでも、順番が違うだけで、物事というのはまったく意味合いが違ってしまうのだと思います。そして、こういった誤解を解くことは、ほとんど不可能なのかもしれません。
本当にそう思っているのに、状況が信憑性を失くすということが、世の中ではいくらでも起こるのです。